読書感想「塞翁の盾」
2020年末に読了していたけど感想が遅くなりました。
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ひと言で言えば「さすがハズレなしの今村作品」
ぼろ鳶組、くらまし屋の2大シリーズ物ではない作品で、舞台は戦国。
秀吉の天下統一が成りひと時の平穏を得ていたが、徐々にきな臭いかぜがふいてきた時代。
主人公の石工・匡介には強い思いがあった。それは、戦乱の世を終わらせるため「最強の盾」たる石垣を作るというもの。だがそこに現れたのは、動機は同じ戦を終わらせたい思いながら「最強の矛」の砲を作ろうとする彦九郎。
そも”矛盾”の語源通り最強の盾と最強の矛が相まみえるときそこにはどんな結果が待ち受けるか・・
二人が対峙する大津城の戦いに、とにかくはらはらさせられた。
引き受けた仕事はやり遂げるのが信念。そこには東軍・西軍などの派閥はない。
それだけの仕事を引き受けるには依頼主との信頼関係が最も大事だ。とにかくこの人たちを守るんだ。その思いを持ち続けることが強いモチベーションとなりよい仕事を生む。
匡介にとってそれは京極家だし、彦九郎にとっては立花家だった。
それぞれのトップ、京極高次と立花宗茂がまたかっこよくて惹かれた。
戦が終わり、武士たちは勝者と敗者に分かれその運命に飲まれていく。
でも職人集団はどこにも属さないのだから御咎めもない。
次の仕事に向けてまた準備していくのだ。
一服の休憩と思われたエピローグ、農地の石積みをチェックする匡介のもとに花嫁行列が向かってくる。何とも素敵なエンディング。読後感も清々しくてGOOD。
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鈍器本とさえ称した分厚い本だったけど読み応え十分。途中で間延びすることもなく私の読書歴においても上位にあげられる本となったのでした。
直木賞候補も納得です。他の候補作品読んでいないので比較できないけど、本作が受賞しないかなあ