読書感想「絶声」
下村敦史さんらしいミステリーの快作。
カネの魔力に振り回される哀しい人間の性。そしてその結末は。
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不治の病の床にあった父親が莫大な遺産を残したまま姿を消した。
残った子供たちは父親の心配というよりもあてにしていた遺産がもらえないことに慌てふためく。取った手段は失踪宣言。何とか父親の死亡を確定させて遺産を手にしたい、その一心でしかない。
ようやくその期限を迎え遺産を手にできると思っているところに思わぬ報せが入る。父のブログが更新されたというのだ。ブログの正偽がはっきりするまで失踪宣言は取り消しとなる。その後もどうにかして遺産を手にするために、いろいろと策を弄する子供たちをあざ笑うように更新され続けるブログ。
実はこのブログにこそ大きな仕掛けがされていたのだ。
最後までそうとはまったく気づかず、謎が明かされた時の心地よいこと。
相変わらず下村さんの作品は読後感が気持ちいい。
遺産相続で争うような親戚はいないけどこういう話を読むと平凡な人生でよかったなと思う。